「びゃくえ」のコンセプト

店主の思いが「びゃくえ」のコンセプト
店主の思いは、託された家族の気持ちです

私はきものを商う家に生まれ、跡を継ぎました。生まれ育った土地なので、周囲にとても親戚が多く、納棺式に立ち会う機会が若い時からありました。きものの商いを始めたばかりの時には何も思わなかったのですが、10年も過ぎた頃からある違和感を感じるようになりました。

それは仏衣の素材についてです。人生最後に着る衣装がペラペラのナイロンなのです。とてもおしゃれな叔父も、家族のために身を粉にして働いた叔母も、みんな最後にピカピカテレテレのナイロンに全身を包まれるんだ、と思った瞬間、こんなのは着たくない、着せたくない!と思ったのです。

上質な天然繊維であるべきと思いました。

なぜかといえば、素材の特性をよく知っているからです。

――当店はきものを商うと言っても呉服屋ではありません。洋服で言えばクリーニング屋に近いイメージでしょうか。きもののメンテナンスが専門のお店です。絹が多いきものですが、持ち込まれるものは必ずしも絹ばかりではありません。素材にあったメンテナンスをするためには繊維を見極める必要があります。

天然繊維や化繊、混紡などの素材の違いを知るために、糸や生地の切れ端を燃やしてみることがあります。見極めが困難な生地でも、その違いがいちばんわかるのが、燃え方の特性です。天然繊維、特に絹はわずかに白い煙が立ち上り、穏やかに燃えます。線香花火のようにまぁるくなった燃えカスは、指で触れても熱さはなく、ほろりとくずれます。

いっぽう化繊は、独特の匂いと黒い煙を出して一気に燃え上がり、タールのような黒い塊になって触れたものに張り付きます。化学繊維は火が付くと同時に黒煙が立ちのぼり異臭がします。そして燃えカスは真っ黒なタールのようになって、触るととても熱いのです。

それに比べ天然繊維、特に絹は、線香花火のように燃えカスがシュルシュルと玉になって優しく燃え、やさしく消えます。立ちのぼる淡いグレーの煙は香しく、すぐに触っても熱くありません。そして燃えカスはシャラリと壊れて落ちるのです。

旅立つからこそ、最後に身につけるものは、体にやさしいものであってほしいと考えます。家族のためにも、自分のためにも。

びゃくえ 店主 高橋和江

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